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アークアンドトークアソシエイツ 今岡一哉 一級建築士事務所 東京都武蔵野市
ホームシアターのつくりかた (5)
2008年01月17日
ホームシアターのインテリアデザイン −1
今回はインテリアデザインを考えます。
プロジェクターとスクリーンを使うホームシアターの場合、インテリアはとくに重要です。
プロジェクターには、三管式のCRT、液晶、DLP、そして反射型液晶(LCOS)などがあります。(絵の好みやメーカー・製品ごとの差があるのでここで優劣にはふれませんが)プロジェクターをフロント投影する場合、あたりまえですがどれだけプロジェクターの性能がよくても、部屋を暗くした状態のスクリーンの画面より黒い色を再現することはできません。
つまり、映像の黒い部分を理想的に再現するためには、インテリアとしてスクリーン面をできるだけ暗く保つこと、つまり余分な光がスクリーンに届かないようにすることが重要になります。
そのため、遮光カーテンなどで外光を遮断できるようにしたり鑑賞中に使う手元灯や間接照明がスクリーンに影響がないようレイアウトに気をつけますが、これだけでは十分ではありません。実はもっともスクリーンに影響を与える光はスクリーンの映像そのものです。スクリーンに投影された映像は部屋いっぱいに拡散しシーンによっては部屋を明るく感じさせるほどですが、その光は床・壁・天井で反射して再びスクリーンへもどる迷光( ※1)という現象をおこします。
映画館の壁・天井が黒いのはこの迷光をおさえるためです。
迷光を抑えるためには部屋の壁・天井を黒くするほかありませんので、専用のシアタールームを計画するのならいわゆる“ブラックルーム”にするべきです。画質のグレードアップは間違いありませんのでぜひ一度は検討してみてください。
リビングからシアターへ − “場面転換”を楽しむ −
ホームシアターが映画などのメディアを楽しむためにあるのはあたりまえですが、その醍醐味にはもうひとつ日常(リビングルーム)から非日常(シアタールーム)への“場面転換”があります。ふだんは家族が行き来しておしゃべりするリビングルームが、例えば夕食のあと、暗めの間接照明にきりかえてスクリーンをおろすと一転してシアタールームになる。
リビングルームとしても使う部屋を“ブラックルーム”にするのはちょっと勇気がいりますが、この“場面転換”には白い壁や天井をもつ普通のインテリアのほうがむいています。
黒やグレーの空間は平坦な印象を与えるのにたいして、白い空間はスポットライト、間接照明、調光を組み合わせることで空間の表情を様々に変化させることができます。迷光を減らすにはスクリーンのサイドに暗色のカーテンを吊ってみましょう。天井から床までの丈のあるカーテンは部屋のイメージを大きくかえる効果的な小道具です。
機器側の対策としては、光の指向性が強いビーズ系やパール系のスクリーンは余分な光の拡散を抑え、グレーマットのスクリーンは明るい部屋でも黒の再現力を高めます。明るめの部屋でも楽しめることをうたったハイコントラストのプロジェクターを選択するのもよいでしょう。また同じプロジェクターでも100inchの画面を80inchにすることで(スクリーン面積が64%になり)同様にコントラストが高くなり黒がきわだちます。
注意したいのは、コントラストを強調することはオリジナル映像を忠実に再現することとは違います。できればお近くのショールームなどで実際に映像を観て確かめてください。(⇒
echou ホームシアターショールーム)
もしもプロジェクターでなく大画面テレビを選択するなら、上のような心配はほとんど必要ありません。
特等席は少し狭くなりますが、画面が明るく部屋の環境に影響されにくいので、インテリアの自由度は大きく広がります。明るい部屋でも楽しめる反面、大画面になるほどディスプレーに窓や照明が映りこむ可能性が高くなりますから、これらの位置関係に注意してテレビを配置しましょう。
(続く)
バックナンバー
ホームシアターのつくりかた (1)
ホームシアターのつくりかた (2)
ホームシアターのつくりかた (3)
ホームシアターのつくりかた (4)
ホームシアターのつくりかた (6)
※この文章は友伸建設株式会社ホームページ“echou-house”用に書き下ろしたものを加筆して転載したものです。筆者は音響の専門家ではありませんが、建築士としての常識的知識と、録音スタジオの設計にデザイナーとして参加した経歴から学んだ知識をもとに、できるだけわかりやすくホームシアターを解説したいと思っています。(今岡一哉)
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