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アークアンドトークアソシエイツ 今岡一哉 一級建築士事務所 東京都武蔵野市
※1 暗騒音(あんそうおん・background noise):ある環境において、目的の音にたいして、それを取り除いた場合になお存在する音をさす。
住宅の暗騒音の音源は、窓から入る交通音・工事の騒音・風の音、冷蔵庫・洗濯機・掃除機などの家電、エアコン・換気扇などの空調機器、テレビ・ラジオ、パソコンのファン、調光スイッチなど。
一般的には、暗騒音が小さいほど好ましい住環境といえるが、鳥の鳴き声やせせらぎの音をバックグラウンドサウンドとして流したり、窓の遮音性能をあえて低くすることで、目的の音(隣戸の音)のマスキング効果をねらうなど、暗騒音を積極的に利用する場合もある。

ホームシアターのつくりかた (3)
2008年01月07日


録音スタジオなみの遮音とは?

そもそも“完璧”な遮音は(現実的には)ありません。

500Hzの音にたいして60dBの遮音性能をもつ部屋があるとします。
この部屋の中で500Hzの音を90dBの大きさで発生させると、90−60=30dBの音が透過しますが、だからといって一概にこの部屋は遮音できていないということにはなりません。

音の大きさの尺度「dB(デシベル)」は人に聴こえるもっとも小さな音を基準=0dBとしていますが、実際の生活環境では暗騒音(※1)により目的の音が隠される「マスキング効果」のためにそこまで小さな音を聴きとることはできません。
静かだと感じる生活環境でも昼間であれば40dB、深夜でも25〜30dB程度の暗騒音があります。
遮音設計では、透過する音を0dBにするのではなく、このマスキング効果によって音が聴こえなくなるレベル、または聴こえるが支障がないと判断されるレベルを目標値とします。このため聴き手の環境、耳のよさや注意力、音(リズムやメロディ、好み)などによっては、目標値に達していても問題が発生する場合があることに注意しなくてはいけません。


住宅には住宅の遮音

ホームシアターは一日24時間音を出す録音スタジオとは違います。
夜10時頃までであればお隣のテレビやエアコンなどの生活音によるマスキング効果が期待できます。遮音性能が60dBの部屋で90dBの音を出しても、お隣へ透過する音が30dB程度ならおそらく支障はないでしょう。
一方で、もしもお隣が寝室なら時間帯によっては注意が必要です。
テレビやエアコンを消し照明をおとして布団に横になると、部屋の暗騒音レベルが下がり、期待していたマスキング効果が得られなくなります。暗騒音が小さくなるにつれ30dBの透過音はお隣で聴こえるようになり、場合によってはトラブルに発展する可能性もあります。

前回でも書きましたが、住宅のために設計された建物の1室を、録音スタジオのように遮音するのはとても難しいことです。
もちろん建物の基本設計の段階から演奏室やホームシアターを考慮してきちんと計画すれば、効率良く遮音することも可能ですし、ぜひそれをお薦めします。
しかしそうでなくても、住宅というそれなりに限られた性能を理解して、映画を楽しむ時間帯やルールをきめるなどちょっとライフスタイルを工夫すればホームシアターライフを楽しむことは十分に可能です。

次回からは住まいとホームシアターについて具体的に考えてみたいと思います。
(続く)

バックナンバー
ホームシアターのつくりかた (1)
ホームシアターのつくりかた (2)
ホームシアターのつくりかた (4)
ホームシアターのつくりかた (5)
ホームシアターのつくりかた (6)

. ※この文章は友伸建設株式会社ホームページ“echou-house”用に書き下ろしたものを加筆して転載したものです。筆者は音響の専門家ではありませんが、建築士としての常識的知識と、録音スタジオの設計にデザイナーとして参加した経歴から学んだ知識をもとに、できるだけわかりやすくホームシアターを解説したいと思っています。(今岡一哉)




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