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アークアンドトークアソシエイツ 今岡一哉 一級建築士事務所 東京都武蔵野市
ホームシアターのつくりかた (4)
2008年01月10日


住まいとホームシアターについて考える

前回まで「遮音」について書いてきました。
デザイナーの書くホームシアター論にしてはややカタい話に流れてしまいましたので、今回は未来のリビングシアターをイメージしてみましょう。

アーノルド・シュワルツェネガーが主演した「トータルリコール(Total Recall・1990年)」のたしか冒頭のシーンで、主人公のリビングルームの壁面に大きなディスプレイが登場します。それは日常生活の一部にとけこんでいて、主人公はコーヒーを飲みながら朝のニュースを観たり、窓から眺める景色のように大自然の風景を映し出していました。

今、自宅に大画面と5.1ch音響システムをおもちのかたの場合、ほとんどは普段ご覧になるテレビと、DVDやLDで楽しむ大画面スクリーン(+5.1ch)を使い分けているのではないでしょうか。
けれど、第1回で書いたように、これからのホームシアターはこれまでの映画鑑賞という目的にくわえ、日常のあらゆるシーンに欠かせないもっとユニバーサルなツールとして普及していくでしょう。
「トータルリコール」の主人公のように食事をしながら観るニュース、友だちとわいわい楽しむオンラインゲーム、家族でペイパービューのロードショームービーを観たり、ハイクオリティなサウンドで恋人とライブコンサートを楽しむ。そしてときには仕事のパソコンやTV会議のディスプレイとしても、オン/オフのあらゆるシーンで活用されるシアターリビング像が今後はもとめられると思います。


「ファミリークラス」のシアターリビング

先日ソニー株式会社OBで音響全般に造詣のふかいSさんにお話をうかがいました。
「楽器練習室もそうですけど、ホームシアターというとみなどうしても遮音や防音のことをまず最初に考えてしまう。けど大切なのは感動であって、それを楽しむ家族や仲間なんです。そんな、感動を覚えたり、ともに家族や仲間とすごす時間があることが「豊か」というものなんだから、まずは良い絵と良い響きを考えることが大切で、遮音や防音を考えるのはそのあと、最後でいいんじゃないですか。」

遮音や防音から考えようとするから、専用シアタールームかそうでないかの「オール・オア・ナッシング」的発想になってしまう。
Sさんはもともとソニー・ミュージックエンタテインメントでメディアを製作する側の立場にいて映画や音楽ソフトのクォリティをよく理解しておられますから、もっと多くの人に美しい絵や良い音をあじわってほしいと、つねづね歯がゆい思いをされているようです。
そんな思いから「感動を生活に」というコンセプトを第一に考える、シンプルで生活本位のシアターリビングをこれから考えていきたいですね、というようなお話でした。

映画、テレビ、ゲーム、パソコンが備える映像・音響のポテンシャルは、今まさに跳躍の時期です。
せっかく目の前に揃いつつあるこのクオリティを、賢く有効にひきだせば、もっとリーズナブルなコストで豊かな時間をリビングにとりこむことができるはずです。
もちろん専用のシアタールームがあるにこしたことはありませんが、今の住宅事情を考えればそれはかなり贅沢な希望です。
だからといってあきらめるのではなく、これら高画質・高音質のポテンシャルを効果的に引きだす、今までの普通のテレビと専用シアタールームとの中間のグレード「ファミリークラスシアター」を考えていきたいと思っています。
(続く)

バックナンバー
ホームシアターのつくりかた (1)
ホームシアターのつくりかた (2)
ホームシアターのつくりかた (3)
ホームシアターのつくりかた (5)
ホームシアターのつくりかた (6)

. ※この文章は友伸建設株式会社ホームページ“echou-house”用に書き下ろしたものを加筆して転載したものです。筆者は音響の専門家ではありませんが、建築士としての常識的知識と、録音スタジオの設計にデザイナーとして参加した経歴から学んだ知識をもとに、できるだけわかりやすくホームシアターを解説したいと思っています。(今岡一哉)



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